音色はサウダーデ
Saudade

2025年3月リリース
絵柄サイズ:41.0×60.2cm キャンバス・ジクレー 限定285枚

PDF 電子リーフレット

※環境問題への取り組みの一環として、作品リーフレットを電子化いたしました。
ご家庭でプリントアウトしていただくことも可能です。
しかしながら、絵柄を再利用したり販売利用したりする行為は、著作権の侵害行為となりますのでご注意くださいませ。


ヨーロッパ西端の国ポルトガルの南端に在る街ファロから、
スペイン国境の方向へと、海岸線沿いの町を巡っていた。
人々は大らかで、時間がゆるやかに流れているのを感じる。
海へと流れ込む川の両岸に沿って、
カフェやレストランが並んでいるエリアと出会い、
眺めのよい席から景色をゆっくりと観察することが出来た。

日暮れ時、もう一度同じ場所へ行ってみると・・・
川辺は宵の表情へと変わり、ボサノバの生演奏が響いていた。
耳あたりの良い囁くようなポルトガル語の歌声と
柔らかく滑らかなギターの旋律に、気分も軽やかになってゆく。
今、この場所の空気になんと似合っているのだろう、と心動かされた。

*  *  *

タイトルにある“サウダーデ”というポルトガル語は、
他の言語でひと言にして訳すのが難しい、感覚的な言葉とのこと。
簡単に訳せば「郷愁、哀愁、切ない思い出」となるらしいが、
その中に、複雑で多様で独特なニュアンスをはらんでいるという。
そして、ポルトガルの人々がとても大切にする感情なのだそう。

その夜、ゆったり響くボサノバを聞きながら、見て、感じた、サウダーデ。
ノスタルジックなくせに、甘さや奏でる喜びなども感じられる。
その複雑な音色が、聴覚(耳)でなく視覚(目)でも伝わるように
絵で表現できないだろうか・・・と。

切ない感情を寒色で。甘さや軽やかさを暖色で。
異なる色調を組み合わせてゆきながら、
自分の心に響いた“サウダーデ”の音を、色で描こうと挑んだ。

笹倉鉄平


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