イングランド北部にある湖水地方。
小さな湖が多く点在する中の一つ、グラスミア湖で。
周囲ぐるりを巡るフット・パス(※)を散策している時、
目が釘付けになる光景が、樹々の向こうに見えた。
白髪の後ろ姿も清々しい熟年のご夫妻が、
身をくねらせるように横へと伸びた一本の太い幹に座り、
水面を漂う水鳥たちを眺めている・・・その様子が、まるで・・・
既に巣立った自分の子供たちを見守っているかのように目に映った。
近づく気配と足音が、静かな空気を乱しでもしたか、
すぐ立ち去って行かれたのが申し訳なく、残念にも思った。
そこには、不思議な方向へ伸びた幹が在って・・・
そのねじ曲がった様は、なぜか、
二人が重ねてきた人生の道のりの象徴であるかのように感じてしまった。
* * *
同じ姿の幹、同じ枝ぶりの木など、一本たりとも無い。
一直線に、均一に、環境の影響を受けずに伸びる木も枝も、また無い。
人生も、予想外の方向へと伸びたり、ゆがんだり・・・
紆余曲折した色々が、人生を時に思いもよらず、曲がりくねらせることもある。
だからこそ、強くて、美しい、と思う。
笹倉鉄平
※フット・パス:英国で、公私の区別なく通行権が認められている、歩行者のための小道。
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