イタリア、フィレンツェでの個展‼

皆様、つつが無くお過ごしですか?
このページの更新が、またもや随分ご無沙汰になっておりました・・・と、いいますのも、私の夢であったイタリアの芸術の都フィレンツェでの個展が、今年実現する運びとなりました為、諸々の具体的事項が春頃から次々決定し始め、その対処と制作でずっと大変慌しい日々だったからなのです。

ここまで漕ぎ着けるのに、開催日程の変更や会場の選定などの不確定な要素が多く、皆様になかなかお知らせ出来ない状況が続いていました。
しかし、やっと詳細をお伝え出来る段階まで来れたようで、嬉しく思っています。
(一重に、フィレンツェ.日本.文化経済交流協会、会長のレジーナ・シュレッケルさん、同副会長の野村是さん、そして、現場で多大なる労力を費やして下さった松浦真純さんのご協力の一言に尽き、この場を借りて心からの謝意を表したく思います。)

また、昨年のイタリア・レカナーティ市での個展をプロデュースし成功へと導いて下さった、フィレンツェ・アカデミア(ヨーロッパ最古の美術大学)教授であり、自らも優れたアーティストであるビンツェンツォ・ビアンキ先生が、今回も監修を引き受けて下さることになっており、これにも感謝感激です。
ビアンキ先生曰く、「ここフィレンツェは、イタリアの中でも特に芸術を見る目が厳しい。」とのことで、早速いい意味でのプレッシャーを与えて下さいました(笑)。

しかし、考えてみるとそれもそうでしょう・・・皆さんもご存知と思いますが、フィレンツェの街は、ルネッサンス美術の名だたる巨匠達―ダ・ヴィンチ、ミケランジェロ、ラファエロら多くの芸術家が、メディチ家の擁護などのもと、目を見張るような活躍をした舞台でした。
そして、”暗黒の中世時代”から脱却し、人が人らしくその生を謳歌する人間復興運動でもあった”ルネッサンス”は、この街で生まれ、その後広くヨーロッパ世界へ伝播してゆくことになりますが、その頃から脈々と芸術都市としての歴史・文化とその誇りを、育んできた場所であるわけですから・・・。

初めは、そんな地で個展を開く事自体が、私にはとても恐れ多いことで、不安にもなりました。
ニュアンスが随分違うかもしれませんが、例えば、野球の本場アメリカ・大リーグでバッター・ボックスに初めて立った頃のイチロー選手や松井選手達も、こんな気分だったのだろうか???などと、幾分突拍子も無いことを考えつつ、身が引き締まる思いで現在も作品と格闘しているのですが・・・。

そんな中、私にとってある意味”救い”となったのは、今年2005年が、フィレンツェと日本の古都・京都の、姉妹都市締結40周年にあたる記念の年であったことでした。
京都の街ならば、まだ市電が街中の道路を走っていた時代から、馴染みがありましたし、それこそ高校生の時分から京都の絵を描いていましたので(現在も描いてますが)、この切り口であれば・・・私にも、なんとかひとつの展覧会として成立する制作展開が出来るのではないかな、と思ったわけです。

京都とフィレンツェが姉妹都市というのは、私には不思議なくらい納得のいく話です。
京の都の歴史は、794年(“ナクヨウグイス平安京”)に始まり、その後千年以上(江戸遷都まで)”帝おわす都”として、ずっと日本の文化・芸術を担う地であり続けているわけですから、京都だって歴史都市として、決してフィレンツェに負けていないと思っています(笑)。
そこで、フィレンツェの人達に、世界の東と西に遠く離れた両市において、その形や表現は異なっても、そこで生活を営む”人々の心”というものは、そんなに違うものではないのだという事を、作品から感じ取ってもらえたら・・・また、京都に、(しいては日本の文化に)興味を持ってもらえる機会となれば・・・それだけでも、展覧会を開く意義は充分にあるのではないか――そう思えたことで、重くのしかかっていた肩の荷も少し軽くなったような気がしたのです。

また、”絵の世界”の方へと目を転じると・・・
「京都」といえば・・・そこには伝統的な「日本画」という流れが厳然とあり、その歴史はこの先も引き継がれ大切に護らてゆくでしょう。
そうあるべきであり、それは大変に素晴らしいことだと思っています。
そういった中、私という画家が出来ることは、”今”という時代を生きている目の前の京都を、感じたままに自分なりの絵として表現することしかないのだろうと思っています。

そんな京都の絵を「これからフィレンツェに持って行って観て頂いてきます」という主旨(?)で、7月末に京都でも展覧会を行うことになりました。
そしてその後、それらの作品に、現在もまだまだ制作中であるフィレンツェの絵を加えて、9月上旬にフィレンツェで展覧会を開催する予定となっております。
フィレンツェ・京都の両市役所にも、様々にご協力頂いたお陰で、会場はレプブリカ広場の近くのPalagio di Parte Guelfa内の、ブルネレスキ(フィレンツェのシンボルである大ドームの建設者)の造ったサロンを展示スペースとしてご提供頂けることとなりました。
身に余る光栄です。

ところで、イタリアでは去る6月24日は、”サン・ジョバンニの日”の祭日でした。
この聖ジョバンニは、フィレンツェの守護聖人である為、市では花火などが打ち上げられ、お祝いムードに包まれる一日なのだそうです。
それにあわせて今年は、京都市からも市長ご一行が来賓として招かれたそうです。
そんな折、ヨーロッパ最古の由緒ある薬局の一つとして有名であり、現在は自然化粧品や石鹸などを主に扱っている、サンタ・マリア・ノヴェッラ薬局のフィレンツェ本店・サロン(最近では日本にも出店されています)にて、個展告知の為のミニ・プレ展といった感じで、私の原画を何点か展示して頂いておりました。
その上光栄にも、京都市長の一行がそこへいらして、作品をご鑑賞頂けたということを伺い、とても嬉しく思っております。
可能であれば、ご感想など伺ってみたいものです。

以上、多くの方々のご協力の下、実現の運びとなったフィレンツェでの個展ですので、日本人画家として恥ずかしくない作品を展示し、得難い経験となるよう取り組んでいる真っ最中です。
もっと時間があれば、まだまだ描きたい場所があるのですが・・・またの機会に恵まれることを祈りつつ、日程ぎりぎりまで制作を続けるつもりでいます。

昨年のレカナーティでの個展から、ほぼ一年。
今年もたまたま引き続きの海外個展開催の運びとなっておりますが、日本での展覧会の開催や新作の発表が、決しておろそかにならない様にという戒めも、いつもスタッフ達と話あっていますので、そちらも楽しみにしていて下さい。

貯まりに貯まったご報告を一気にしてしまったので、少々長くなってしまいましたが、最後までお読み頂き、ありがとうございました。
一日一日が矢の様に過ぎるが如く感じる毎日ですが、体力・気力の保持にも充分注意を払っておりますので、なんとか本番まで上手にやっていけるでしょう。
不安定な気候の季節です。
皆様も、気力は常に体力の上にあるということを忘れないように(結構忘れてしまいがちですよね)、どうかお体ご自愛下さい。

笹倉鉄平

2005

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