質問にお答えします Part.3

不安定な気候が続いておりますが、皆様いかがお過ごしでいらっしゃいますか?

今回は、お寄せ頂きました様々な質問・疑問に、またお答えしてゆこうと思います。
特に、サイン会などで直接伺う質問に対しては、なかなか上手に即答できないことが多い為、こちらでゆっくりお答えさせて頂きます。
また、メールなどでお寄せ頂きました場合も、ここで対応させて頂きますので、引き続きご遠慮なくお寄せ下さい。

では、まずは少し前にメールにて頂きました質問から始めさせて頂きます。


Q. 「落ち込んだり、元気が出ない時に、先生は何か元気になれる方法などお持ちですか?」

A. 基本的に、深く落ち込んだり沈んだりということが、年齢を重ねてきたせいか最近はほとんどないのですが、以下は、あくまでも”私の場合”ということで…。

なんとなく気分的に元気が無いような時には、そのままじっと留まってしまわないように、とにかく頭を空っぽにして、”手・足を動かす”ことにしています。
制作中などは特に、ちょっと柔軟体操をしたり、いつもより少し大きな音で好きな音楽を聞いたり、それに合わせてギターを弾いたり…と。

また、気分転換には、まだ行く予定も無いような場所への仮想”旅プラン”を考えてみることもあります。
気に入った旅関係の本やインターネットで、まだ訪ねたことの無い国や地方の歴史や文化・特色・人々の暮らしを調べ、思いを馳せながら、鉄道などで街々村々を巡るコースまで思い描いてみるのです。

そうこうしているうちに、絵の制作に向かう元気が湧いてきますので、私にとっては、一番手軽で効果的な方法なのかもしれません。


Q. 「展覧会で、何か印象に残っている出来事ってありますか?」

A. これは正にサイン会時に尋ねて頂いた件なのですが、その場ですぐには答が思い浮かばず、お詫びをお伝えしてそのまま終わってしまいました。そして、帰路につきながら考えているうち、ふっと思い出しました。

もう10年以上も前の話なのですが・・・
日本にたまたま出張でいらしていた外国人の方が、東京の百貨店で開催していた私の展覧会へ足を運んで下さり「メヴァギッセイ」という、イギリス東南部コーンウォール地方の港町を描いた絵を、とても気に入って下さいました。
なんとその方、そもそも出身地が首都ロンドンからも遠隔地にある、その小さな港町メヴァギッセイだったのだそうです。

「メヴァギッセイ」

私はその現場にはおりませんでしたが、聞いた話では…結局イギリスのご自宅に帰る際、作品を持って帰って下さることになりました。大慌てで額の手配をした担当の方は、作品を成田空港まで届け出発ギリギリで無事にお渡しし、自家用ジェット機で英国へと帰ってゆかれるのをお見送りしたとのことでした。(きっと成功されて故郷を離れ、ロンドンなどの大都市に住んでいらっしゃるのでしょう)

『自分の故郷を描いた絵を、英国ですら見たことが無いのに、日本で出会えたとは驚きだ』とおっしゃって、喜んでいらしたそうなのですが…それを聞いて、「そんなこともあるんだなぁ」と、こちらも妙に感心したものです。

その方は、今も私の絵を観る度に自分の故郷に思いを馳せているのだろうか、などと感慨深くもあり、嬉しくもあり…。

勿論、他にも海外の個展などでの思い出や、地方での独特の経験など沢山あるのですが…
上記の”不思議なご縁”は、強い印象として今も残っています。

Q. 「どんな一日を送ってますか?」「絵はいつ描いているのですか?」「お休みはいつ取っているのですか?」「休日には何をされてますか?」

A. …等々ここ最近、(たまたまなのでしょうが)関連性のあるこういった質問をたて続けに頂戴しましたので、まとめてお答えしようと思います。

一日の中で、絵を描いている時間帯は、会社にお勤めの方が勤務されている時間帯と大体同じだと思います。ただ、制作の作業段取りや手順(油絵の具の乾き具合など)によって、日々時間のズレもありますし、時には、夜遅くまで描いていることもあります。

外出しての仕事以外の日は、毎日単純にその繰り返しですが、全く飽きることはありません。
自分でも訳が分かりませんが(笑)…正直な所、可能ならば絵を描くことは一日でも休みたくないぐらいです。
そんな風に話すと、友人や医師の方等からは「良い仕事をする為には週に1~2度位は休養した方が良いのでは?」と指摘されたこともあります。

勿論、”良い仕事”をしたい気持ちは自分としても強く持っていますので、定期的に休みを取ろうとしてみるのですが、どうしても描きかけの絵のことが気になってしまって、ゆっくりと休む気になれないのです。
過去には、無理やり周囲の人に「週休二日宣言」をしてみたこともありましたが…やはりそれも続かず、すぐに断念しました。

ここ2~3年は体調がとても良いこともあり、本来の意味での”休日”は、ひと月に1~2日位でしょうか。逆に無理をして(?)まで休もうとせず、自分なりのペースでもいいかな、と現在は思っています。
もしも会社勤めをしていたら、土日祝にきちんとお休みを取っていたと思いますが、職業柄、自分のやりやすいルールを自分で作ってきた結果そうなったのでしょう。

画家としてスタートしてからは「仕事をしたから休む」ではなく、「仕事の質を上げる為に、必要に応じて休む」というスタンスを理想としています。

ですから、休もうと思った日には、もっぱら頭と体の休養を第一としています。
大概は、映画を観たり、のんびり散歩をしたり、温泉につかったり、本を読んだり…。

そして、それなりの歳になった時には、”その時の”体力・気力と相談をしながら上手に休養を取りつつ、制作活動を一日でも長く続けていられることを、長いスパンで考える場合の目標にしています。

笹倉鉄平

2011

前の記事

父がくれた“大切な景色”