"プリンス・エドワード島"への感謝と共に

今年、年明け早々から取り掛かりました「プリンス・エドワード島の入り江」。ようやく皆さまにご覧頂く準備が整い、この度の発表となりました。

少年時代に知った、カナダ東海岸に在るプリンス・エドワード島。以来、いつか必ず訪ねて絵を描きたい・・・と思い続けてきました。それが長い長い年月を経て、ようやく完成しました。
筆を置いた時、キャンバスの前で"やっと描けた!!"と小さくガッツポーズをした後は、茫然と画面を眺めながら、初めて「赤毛のアン」の文章で出会った島の美しい自然や暮らしのこと等・・・想像にふけった当時の記憶が呼び起され、感慨深く振り返っておりました。

中学生の夏、図書館で「赤毛のアン」の本を手に取っていなかったら、この絵は今ここに無かったはず。そして、ひょっとしたら、画家の道へと進んだことにも影響を与えていたのかもしれない、と・・・
なぜなら、何の変哲もないありふれた風景の中に、美しさを見つけようとしたり、小さな美しさを何倍にも大きく、イメージをふくらませようとしたり、そんな風に気持ちを高める志向を持てるようになったのは、この物語と出会ってからでした。

「グリーン・ゲイブルズ」 色鉛筆・アクリル淡彩 2017


物語の最終章「道の曲がり角」には、"曲がった先で道はどう続いてゆくのか・・・何が在るか分からない。けれども、もしかしたら、とても素晴らしい世界が広がっているのかもしれない・・・そう信じてゆきたい"といった意味のことが書かれており、子供心にも印象深く胸に刻まれました。物語のラストには、イギリスの詩人ロバート・ブラウニングの詩が引用されているのですが、今でもその詩を呟くこともある程です。

勿論、現実と文学や絵の中の世界は、全く違うのですが・・・
実際に、旅先で曲がった先が見通せない道などに出会えばそんな風に思いますし、過去、仕事や将来のことでも、"アンのように"前向きに考えるよう努めてきました。・・・今思えば、そんな思考で救われたり先が拓けたりしたことも、あったように感じます。

個人的には、色々な感謝を込めながら、この「プリンス・エドワード島の入り江」に力を注ぎましたが・・・
観て頂く方には、何も考えず、自然に、気分よく、あくまでも"ずっと眺めていたい風景"となることを目指し、制作致しました。リラックスした幸せな気分を感じて頂けましたら、とても嬉しく思います。

笹倉鉄平

2018年08月24日