“◯◯のベニス(ヴェネチア)”

"画業25周年"を冠させて頂いた、東京での「版画全作品展」には多くの方々にご来場を頂きまして、ありがとうございました。

振り返ってみれば、自分自身にとっては"目の前に在る制作中の1点が全て"という毎日の繰り返しでしたが、その間に版画の作品数は、気付けば"181"にもなっておりました。
そして、種類が増えるに従い、版画全てを展示するだけでも広いスペースが必要になってきています。

その為、今回は原画の展示は無かったのですが、「今ではなかなか目に出来ない昔の作品にも会えて懐かしかった」「昔の版画作品を初めて見られて嬉しかった」等々ご好評のお言葉も頂戴し、安堵と共に長く続けてこられた喜びと感謝を改めて感じておりました。

そして――"182"作目が、このほど発表されました。
皆さまの応援があって、こうして新しい作品を世の中に出してゆけること、心より感謝でございます。

さて、新作の舞台はイタリア、ヴェネチア(=べニス)。
今夏に描き上げたのですが、そもそも描くきっかけの元の元は、前作「ユトレヒトの花束」を描く為にオランダを訪れたことに端を発していました。

ユトレヒトも運河の美しい街ですが・・・オランダは国土を干拓地が占める割合が高い為、多くの街で運河が頻繁に見られます。
首都のアムステルダムなどは、別名"北のべニス"とも呼ばれています。運河が街じゅう張り巡らされている感じや、大小の橋の数の多さ、旧市街での古い建物と織り成す美しい水辺の景観など・・・"北のべニス"と呼ばれる街が数ある中でも、最も違和感が無いような気がします。

そんな"北のべニス"を旅した直後のその足で、今度は"本家"ベニスを訪ねてみたくなったのです。
「ヴェネチアン・ノクターン」の初めの一歩は、実はそんな所にありました。

 

ちなみに、"北のべニス"と称されるヨーロッパの街は、他にもいくつかあります(以下、各根拠は、あくまで私感です)。
例えば、ベルギーのブルージュは、中世そのままの街並みが残っているという点で、ロシアのサンクト・ペテルブルクは、湿地帯を埋め立てて杭を打って建造されている構造的な観点から、また、スウェーデンのストックホルムは、周辺の小さな島々等を含めた"水の都"としてのイメージが・・・と、それぞれに異なる部分で、"ベニス感"(笑)は確かに高いのです。

美しい水辺がある場所に、心惹かれ続ける私にとって、"○○のベニス"は避けて通れないキーワードなのかもしれません(笑)。

笹倉鉄平

2014年10月04日