クリスマス前のオーデンセ

今回は、先日発表された新作「オーデンセの綿雪」を描いた時の思い出話を少々・・・

時は12月の中ごろ、真冬のデンマークを旅する中で訪ねた、オーデンセの街―――
とにかく、こたえる寒さの毎日でした。

アンデルセン(童話作家・詩人)の故郷の町、オーデンセにて。アンデルセン像も寒そう…

オーデンセに着いた時も、やはりとても寒く・・・
駅近くに見つけたホテルは、設備が古いせいかヒーターの効きがゆるく(窓辺のスチームヒーターはどんなに強くしても、ほんのり温かい程度で)、薄ら寒い一晩を過ごしました。
このままでは風邪でもひいてしまいそうだと感じ、翌日は暖房設備が新しそうなホテルを探して、そちらに移ることにしました。

そして、今思えば、この移動が大正解だったのです。
ホテルのすぐ目の前には公園が在って、こじんまりとして親しみの湧くクリスマス・マーケットが開かれていました。

部屋に落ち着くのももどかしく早速外へ出てみれば、真っ赤な兵隊さんの制服を着て腰には小さなドラムを付けた3人の子供たちが、タタタっと側にやって来て、満面の笑みを見せながら並んで挨拶をしてくれました。
嬉しい驚きで目をパチクリさせていると、小さな兵隊さんたちの背後を、古き良き時代の作業馬車を模した観光馬車が通り過ぎてゆき・・・
それを目で追ってゆけば、向こうの方では人形劇の小さな箱型劇場の前に人だかりができています。

手廻しオルガンの懐かしいような音色が聞こえたかと思うと、その側では、アンデルセンの時代の衣装を着た子供たちがズラリと並んで、ちょっとしたストリート・パフォーマンスが始まりました。

クリスマスを前にした日曜日の今日・・・どうやら、この町に住む普通の子供たちがそれぞれに練習した芸を披露する場らしく、一輪車、綱渡り、ハンドベル、ジャグリング等々を次々と観衆の前で演じてゆきました。

勿論、プロではないですから正直、上手な子はいません。失敗を繰り返して頬を真っ赤に染めながらも一生懸命で、くじけずに最後まで演じ切ろうと奮闘し・・・その背後には、演者以外の他の仲間たちが立ち並んで、声を出すことなく切実な応援を送っているのが伝わってきます―――

親御さんたちや他の観客たちに混じって、そんな健気な姿に涙が出そうになりながらも見守り、スケッチをしました。
この偶然の出会いに感謝をしつつ、帰国後一枚の絵に仕上げたのが、この作品です。

クリスマス前の日曜日に練習の成果を披露するオーデンセの子供達 (C) TEPPEI SASAKURA / ART TERRACE

 

日が沈んでからは・・・
やはりホテルにほど近い所で出会った、心温まるような光があふれる小さな家の窓辺に心奪われて、小さなキャンバスの作品になりました。

翌日には雪が更に降り積もり、午後になって出かけた散歩の途中で感動した光景が「オーデンセの綿雪」という作品になり、ここのホテルの枕の上で見た夢の中でのシーンもまた、小さな絵となって生まれました。

こんな風に、次から次へと絵の題材が湧いてくることは、そうそう有ることではありません(色々な条件が重なって、初めて絵に描いて伝えたいと感じる"感動"が胸に宿るわけですから・・・)。
アンデルセンが童話を沢山生み出したこの町の夢と自由に満ちた空気の中で、心が解放されてアンテナの感度が高まっていたのかもしれません。
それとも・・・もしかしたら、アンデルセンの魔法だったのかも?!(笑)

外にいる間の寒さ、物理的な気温は確かにキツいものがありましたが、心はとても温かくしてもらえたオーデンセの滞在でした。

笹倉鉄平

2014年11月13日