アトリエから 2016一覧

質問にお答えします Part.9

今年も、気づけば早12月。何かと気忙しい時節となりました。
皆さまからお寄せ頂く質問がたまって参りましたので、お答えしようと思いますが・・・その前に、いつも書き忘れてしまう件を一つ。

音楽好きを標榜していることもあってか、時々音楽のCDを頂戴致します。お薦めの音楽から"自作の"ものまで。
私の絵を楽しんで下さる皆さまとは、やはり音楽の感性も合うのでしょう・・・頂戴したCDは、絵を描いている時にも聞いております。
私の場合、音楽と絵はとても"仲良しな関係"にあるものですので、全て嬉しく楽しく聞かせて頂いております。
都度お伝えしそびれてしまうばかりですので、この場を借りまして、お礼を申し上げます。

  *     *     *

さて、まずはメールにて頂戴致しましたこんなお尋ねから・・・

Q.1 『今日が始まる』で橋の上を歩いている帽子をかぶった黒服の男性のみが水面に映っていません。それ以外は人も建物も空も光も水面に映し出されているにも関わらず。先生のことですので、何らかの意図をもって描かれているように感じます。「希望」を描いたこの作品で先生はこの描写を通して何を伝えようとしていたのでしょうか?

「今日が始まる」 2012年  油彩 (部分アップ)

A.まずは、この様な細部の描写に気づいて下さっていることに驚きつつ、じっくりご鑑賞頂いていること、大変嬉しく思いました。
実は、この帽子の男性、自分のつもりで描きました――とは言え、本来この絵を描いている画家としての自分は、画面の手前側にいるはず。なのですが、"希望の光"の中に我が身を置きたいという想いから、自身の姿というよりは象徴する人物として、橋の上に小さくそっと描いてみました。
つまり、現実には"ここにいない人"という観点から、敢えて影や水面への映り込みを描くことをしませんでした。深い意味合いがあってのことではなく、わがままな理由で、なんだか恐縮です。
そして・・・こんな風に、自由な考察や想像を加えながら絵を楽しんで頂けることは、画家としては大変嬉しいことです。私のコメント等に縛られることなく、これからも想像の翼を広げて絵の世界を楽しんで下さい。

Q.2 満月を描く時と三日月を描く時、心象風景の違いはありますか?

A.月を大なり小なり描いている作品、結構な数があります。それぞれの絵に違う主題が在り、正直、"満"と"三日"の違いだけではない想いと共に、月の表情も一つ一つ描いております。実は、今まで画面に月を描く際、その形・大きさ・色等をどんな風に描くのかで迷ったことはありません。絵のテーマに沿って、その時々の心象や想いが自然と月の姿にも反映されるからなのだと思います。
ですので、月の形からそれらを系統立てて、言葉で説明することはとても難しいのです。

Q.3 「ヴァンドーム広場」等の作品で見られるもので、外灯が透けているように描かれているようですが、これはどういった意味合いを持っているのでしょうか?

「ヴァンドーム広場」 2008年 油彩

A.絵の主役たる部分(傘を差したおじさんのドラマ)が、画面の中で引き立つように、外灯の存在感を希薄にすべく敢えて透けさせました。
ならば、無理して外灯など描かなくてもよいのでは?・・・ということでもなく。この外灯は、絵の一要素としては大切なものでありながら、一番手前に在ることで存在感が強すぎた為、こういった効果を使って描いてみたのです。
他にも、"透けさせる"効果を使って描いた作品は多々ございますが・・・(「ヴァンドーム広場」の場合とは違い)そのほとんどが、絵に描いた場所で頭に浮かんできたイメージ等々を、風景の上に重ね合わせて描いたものです。

Q.4「慈しみの光」は、ほかの作品と違い、楕円形キャンバスの作品でしたが、これも何か意味を持っているのでしょうか?

「慈しみの光」 2015年 油彩

A.この作品では、阿弥陀如来像のお姿から感じ取った"万人を慈しみ救う温かなオーラ"を、光に託しながら自分なりに描こうとしました。
お像の持つ、安らぎをもたらす柔らかな空気や優しさに包まれるような雰囲気を、より円やかに伝えられるように・・・と、キャンバスも角のない楕円を選んだのです。

Q.5 笹倉先生が好きな画家はどなたですか?また、お好きな絵画についてもすごく興味があります!!

A.「好きな画家」も「好きな作品」も有名無名を問わずとても数が多く、また多岐に渡ってしまいます。それを絞り込んで、一つの回答として述べるには、内容的にも膨大に過ぎてしまい・・・。
そこで、過去にこのページに掲載させて頂きました話題の中から"ほんの一例"ということで、関連していそうな回へのリンクを以下に上げておきます。ご興味がございましたら、ご覧になってみて下さい。

・2001年07月19日感銘を受けた画家達
・2005年01月20日"トリ"といえば伊藤若冲
・2008年11月07日"印象派"の話
・2012年09月07日質問にお答えしますPart.4 のQ.1への回答

以上、文章での説明がなかなか難しく、感覚的なお話になってしまう部分も多々ございました為、上手くお伝え出来ているのか、答になっているのか、毎回自信がございません。申し訳なく感じつつ、皆さまの寛容なご理解にも甘えつつ・・・
貴重なお時間を割いて頂き、メール・お手紙・アンケート等にメッセージ/質問を頂戴し、心より感謝致しております。個々へのお返事は出来ませんが、全てありがたく拝読致しております。
<(_ _)>

笹倉鉄平

スタッフ注:掲載している質問につきましては、お問合せの内容部分のみを編集抜粋させて頂いております。

2016年12月08日

「ソワレ・ド・ノエル」ができるまで

先日来、大丸百貨店の東京店、大阪梅田店それぞれにて開催されました展覧会「絵で旅するヨーロッパ」には、双方多くの方々にご来場を頂きまして、ありがとうございました。
旅するような楽しい気分を、少しでも味わって頂けましたことを願いつつ…。

また、各サイン会で、列に並んで頂き順番をお待ち下さった皆様には、恐縮でございました。
特に、9月下旬ヨーロッパからの帰国直後で臨んだ東京大丸でのサイン会では、時差がまだ残っておりました為、サインをすっかり終えてから「あ、前にもお会いしている方だった…」と、後になってから気づいたり…等と、頭が全く冴えておりませんでした(いえ、決していつも冴えているわけではないのですが(笑))。

*          *          *

ハロウィンも終わり、早いもので、世の中ではそろそろクリスマス気分高まる時節となりました。
新作「ソワレ・ド・ノエル」は、クリスマス・シーズンのパリの街角を想像しながら描いた作品です。

久しぶりに、制作途中に画面の画像を何枚か撮ってみました。
下描きの状態から仕上がるまでの変化を、楽しんで頂ければ幸いです。

 

別紙に描いた下描きを、ベージュ色の下地塗りを施したキャンバスに大まかに写し取り、
鉛筆で下描きを進めてゆきます。

 

どの作品でも、「光」を大切にしておりますので、最も明るい箇所の"白"から塗り始めます。

 

次に最も暗い部分を、黒ではなく(この作品では)深い緑茶色で描いてゆき…

 

デッサンをするような感覚で、全体の明度のバランスを見ながら陰影をつけてゆきます。

 

画面全体の色のバランスを考えつつ、薄く溶いた絵具で色をつけてゆきます。

 

全体の色のイメージがつかめた所で、店頭にリボンの付いたクリスマス飾りを付けることにしました。

 

絵具を厚めに塗りながら、徐々に細部まで描き込んでゆきます。

 

画面が、思い描いていたイメージとしっくりと馴染んだ時に筆を置き、サインを入れて完成。

 

【転載・コピー等厳禁】
Copyright for all images above © TEPPEI SASAKURA / ART TERRACE

 

…といった感じで、実際には存在しないクリスマス・シーズンの冬景色を制作し、皆さまへ発表するに至っております。

更に、製作途中に画面が変化してゆく様子を、是非とも"流れ"でご覧頂きたいという我がままをスタッフに伝えました所、手元のスマホで撮影をしたいい加減な画像を、上手に繋げて動画にしてくれました。
加工をしようなどとは思いもせず撮っておりましたので、動画としては無理があると思います。
が、試験的なチャレンジとしてYou Tubeにアップしもらいましたので、よろしかったら下のリンクからご覧になってみて下さい。

笹倉鉄平

 

 

2016年11月04日

英国にて

ポーランドを訪ねた後は、英国へ飛びました。

ずいぶん昔にロンドンで手に入れた写真集に載っていて、いつか絵に描きたいと思っていた場所へ向いたかったからです。辺鄙なエリアで交通の便も悪いため、ついつい先送りになってしまっていたのですが…
体力のある内に行っておかないと、年を取るごとにキツくなるかもしれない…と思い、今回訪れることにしました。

ちょっとした航空便トラブルもありましたが(度々あることですので仕方ないです)…しかし、苦労しつつはるばる訪れた価値はありました。

夜遅く到着した時には、体も気持ちも疲れ気味だったのですが、それを上回る制作意欲が湧く景色に翌日出会え、ここしばらくは朝から晩まで作業に勤しんでおりました。
まだまだ先にはなるでしょうが、いつか作品として完成したときに、お話ししたいと思います。

さて今、長距離列車の車内でこれを書いています。
ロンドンへの道すがら、コッツウォルズの村に立ち寄り、しばしの休憩をとろうと思います。

ところで今回は、スケジュールに多少ですが隙間があったり、移動時間が長かったりしましたので、旅先からのお便りが割と出来て良かったです。

現地では普通、制作上すべき事が多く、いつも時間に追われている感じで、文章まではなかなかお届け出来ない事が多いのです。

例えば…昨年はドイツのボーデン湖からも、南フランスのプロヴァンス地方からも、結局、何も出来ずじまいでした。

 

しかし、これまでの旅の中で出会い、強く印象に残った光景は、その時々の想いを込めた絵として、一枚また一枚と出来上ってゆきました…
この秋、それらを展示する機会を得ました。(さすがに今回の旅の絵は間に合いませんが…)
そんな絵の数々を観ていただきながら、"ヨーロッパを旅する気分"を楽しんで頂けましたら幸いです。
…ということですので、そろそろ帰国致します。

 

笹倉鉄平

2016年09月13日

ポーランドにて

その後ラトヴィアからリトアニアに移動しました。
首都ビリニュスでは、有名な"猫の家"と"犬の家"というものがありましたので、犬・猫好きとして見逃せるはずがありません…とはいえ、勇んで探してみた割には、意外に小振りな屋根の上に乗った石の像でした(笑)。


そして、今はポーランドに来ています。
今回初めて訪れたのですが…「ポーランド」と聞いて思い浮かぶのは作曲家「ショパン」ぐらいで、正直あまり知識もありませんでした。が…こんなにも美しい街並みや、豊かな文化を目の当たりにして、感銘すら覚えております。
世界史の中に登場するイメージとは全く違う、活気あふれる現代の街角や、古き良き家並みが続く旧市街、どちらにも人々の笑顔があふれていました。

これまで描いてきたドイツ圏の家々や建築と、北欧圏のそれとの違いが(今回の旅のコースで)埋まったと申しますか、イメージの中でそれらがつながった感じがしております。
ヨーロッパ各地の街や村を長年描いていると、一軒の家を見ればおよそどの辺りの家か、判るのですが…
初めて見るポーランド独自の建築様式と周辺国の特徴が入り混じったスタイルに驚き、とても新鮮でした。


左の画像はポーランドの地方都市の空港です。予想外と言っては失礼ですが、かなり近代的で、ゆったりとした落ち着きのある空間です。
右側の画像は首都ワルシャワにあるワジェンキ公園のショパン像とのツーショットです。夏の間は、この像の横にピアノが置かれコンサートが開かれていたそうです。
この広く優雅な美しい公園で(もちろん町の中でも)多く見かけたのですが…スマートフォン片手に歩いている若者達が、この夏日本でよく見かけた光景の如く、「ポケモンゴー」をやっているのです。人差し指で画面を弾くような動きや、その反応や行動パターンが日本人とまったく同じで、思わず笑ってしまいました。

笹倉鉄平 (記9月4日)

2016年09月05日

タリンからリーガへ

フィンランドでは天気に恵まれ(雨の日もそれはそれで美しく…)希望していた景色にも出会え、良い仕事が出来ました。その後フェリーでバルト海を渡りエストニアへ…そして今は、ラトヴィアに向かう長距離バスの車内でこれを書いています。首都タリンからラトヴィアのリーガまで約4時間半…それでも鉄道を使うよりもずっと速いのです。


画像は左から、タリンのバスターミナル内、バスの顔、車内の様子です。
これまでにバスもヨーロッパ各地で乗りましたが、最も先進的かもしれません。広いシートの前には個人用モニターが付き、インターネットも繋がり、フリーWi-Fiも完備。無料のコーヒーサービスまであって、低料金。
中世時代の街並みが残るタリンの旧市街のイメージとは対照的ですが、意外にもエストニアはスカイプの開発を始めとするIT先進国とのこと…なんて書いているうちにたった今、国境を越えました。

まったく止まりもせずに。
ただ、人間の都合でひかれた線を過ぎただけ。

国は変わっても、木も草も風景も変わらず、
どこまでも続く、広い空のまま…。

笹倉鉄平 (記8月27日)

2016年08月29日

フィンランドにて


胸中にあるイメージに近い風景を探しに、先日からフィンランドに来ています。

上左の画像は、タンペレという街の市立美術館の入り口で撮ったものです。
画家トーベ・ヤンソンさんが描いた「ムーミン」の原画を以前より一度観てみたいと思っていたので訪れたのですが…そこで最も驚いたのは、その原画が想像していたよりも、ずっとずっと小さいサイズだった事でした。
しかも極細のペンで細かく丁寧に描かれていて、繊細な波動を感じました。 右はその美術館に向かう通りにあった案内サイン板です。街路樹はもう色づき始めており、歩道には落葉がチラホラと…北海道よりはるか北に位置するため、既に秋の装いです。 明日は雨との予報…時折でも太陽の光が射してくれますように、と願っています。

ところで今、リオ・オリンピックでの日本選手の活躍が、こちらのテレビ等では詳しく観れないのが少し淋しいです。しかし選手達の努力の結果や健闘ぶりを知る度に、こちらまで元気をもらっている感じです。
次は東京…そのときばかりは開会式から閉会式まで目一杯、日本で応援しなくては…と思いました。

笹倉鉄平 (記8月21日)

2016年08月23日

夏のごあいさつ

暑中お見舞い申し上げます

2016年盛夏

コンスタンツ・ハーバー 2016年制作 油彩 33.3×24.2㎝

例年よりは少し遅めですが、西から徐々に梅雨も明け、いよいよ夏本番となって参りました。
私も、日々絵を描きつつ合間々々に用事をこなし、と慌ただしくしておりましたが・・・制作の方も一段落しそうなので、そろそろまた旅に出ようと思っております。

欧州は今、何かと不安定な状況ではありますが、だからこそ・・・
これまでと変わらぬ旅の中で、何ら"変わらぬ日常(=小さな幸福)"の景色を、今回も巡ってくるつもりです。
また時折、旅先からのお便りも、ここにアップしてゆければ、と思っております。

長期予報を信じるならば、今年は"とても暑い"夏になりそう、とのこと。
皆さまも、熱中症や夏バテなどにお気を付け頂き、上手に盛夏を乗り切られますよう(そうそう、オリンピック観戦なども楽しみながら・・・)。

笹倉鉄平

2016年07月28日

”つながり”から生まれる絵

繋がる、積み重ねる、呼応する・・・表現は様々でしょうが、何から何かへと関連性を持ちながら、次へ次へと続いてゆくことは、時として前へと進む為のとても大切な"術(すべ)"や原動力であったりもします。
制作活動にあっても、いつもそんなことを意識しておりまして・・・今回は少しその辺の話をしてみます。


つい先日、新作「ボーデン湖からライン河へ」の最終チェックとサインを入れる作業をしました。
今年、年が明けてすぐに原画に取りかかり、年の半分も終わろうとしている今月にようやくリリースの運びとなり、ホッと致しております。

なんとなく感慨深く感じてしまうのは・・・この絵が、実際の風景スケッチを一切ベースに使わずに描いた、初めての作品だったからです。
今までにも自分の想像で、建物を理想的な形に変えたり、移動させたり、地殻変動まで起こしたりして、見た通りの風景ではなくなっている作品も多くありましたが(変化の度合いはまちまちですが)、そこにはベースにした現実の景色のスケッチが必ずありました。

ですが「ボーデン湖からライン河へ」は、船上で味わった爽快感の印象だけを頼りに、実在しない景色の風景画として完成させた作品です。
船の上から見る景色は、当然どんどん流れて過ぎ去ってゆきますから、定点スケッチは出来ません。また、どの地点々々からの眺めもあまりに素晴らしく、取捨選択も難しい・・・であれば、乗船中に風が心地よかった約2時間の"印象"を、凝縮して絵で伝えたいと思い立っての挑戦でした。

ただ、このゼロからの制作は、なかなかに大変で難儀しました。
まず、イメージ・スケッチとして、白い大きな紙に構図などを考えながら下絵を描いてゆくのですが、建物の形や木々を配すバランスやら遠・近、ヨットの距離感や形・・・等々の要素を、あーでもないこーでもないと修正を重ね、何回も々々も描き直してゆきます。ある程度、目指すイメージが紙の上に出来上がった時点で、キャンバスに下絵として写します。ここまで、いつもより随分長い時間を要しました。この後、色づけに入ってからも、"実際にはありそうなのに無い色"を頭に在るイメージから作ってはキャンバスにのせてゆくのですが、思うようにいかず、全体の色調を一面に塗り変えたこともありました。

一連の制作作業は心身共にハードではありましたが、投げ出さずに、チャレンジを完成までもってゆけたことは自信になりましたし、こうした次の絵へと繋がる新しいチャレンジが、常に自分を前へと進ませてくれるのだと感じています。

昨年(2015年)「モーゼルのぶどう畑と、笑顔になる水辺」という絵を描きました。
ドイツのモーゼル河畔に在る、ワイン産地として有名なベルンカステルクースという町を訪ねた時。葡萄畑と家並みを対岸から描いたスケッチをベースにして、実際の風景からは、かなり大きくかけ離れた姿を描き上げられたことに喜びを感じたものです。

そして、そんな経験から・・・もしかしたら、ベースが一切無くても、リアリティに根差した、私なりの理想の風景画が描けるのではないかと――「モーゼルのぶどう畑と、笑顔になる水辺」を描き上げた後に乗ったライン河のクルーズ船上、幸運にも出会った美しい風景や時間を感じながら――頭をよぎった結果生まれたのが、「ボーデン湖からライン河へ」なのです。

更に"繋がり"をさかのぼってみますと・・・「モーゼルのぶどう畑と、笑顔になる水辺」を描くことが出来たのは、その前年の「潮音庭」という絵を描いたからでした。

「潮音庭」 2014年 油彩

京都のお寺、日本庭園の風景画で、サイズも小さいですし、意外に思われたかもしれません。が、光の表現において、初夏のやや逆光気味の日差しや影の描き方に、自分なりの方法を"つかめた"手ごたえを感じました。それを、次の機会でより確かなモノとして発展させてみよう、と決めて次に描き始めたのが「モーゼルのぶどう畑と、笑顔になる水辺」ですから、「潮音庭」が無くては「ボーデン湖からライン河へ」も存在しなかったかもしれません。
(ちなみに、「潮音庭」を描くきっかけになった"繋がり"の作品は「フレームド・オータム・カラー」でした・・・こうして次々にさかのぼってもゆけるのですが、キリが無いのでこの辺で)

そうやってイメージとして浮かんだり、"つかめた"コトの数々を、どんな形であれ一旦作品として描き残しておかないと、次へ/前へと進んでゆけなくなってしまう時すらあります。
ですから、時々描く淡彩でのスケッチや小さなキャンバス作品では、何らかの思いつきやチャレンジを描こうとしていることが多いです。それは、光の表現法であったり、色彩の組み合わせ方であったり、構図だったり、と様々ではあるのですが。

絵から絵へ・・・そういった"繋がり"や"積み重ね"のようなものが、自分への"チャレンジ=創作意欲"となっていることを実感しています。デビュー以来、連綿と続くそんな流れが、画家としての自分を支えているのかもしれない、と年を重ねた今、思っております。

笹倉鉄平

2016年06月13日

お見舞い申し上げます

改めまして、この度の熊本地震で、被災された方々へ心からのお見舞いを申し上げますと共に、犠牲者の方へは哀悼の意を表させて頂きます。

2011年秋に熊本を展覧会でお訪ねした折には、多くの皆様に温かく迎えて頂きましたことを思い出しております。
そして、熊本の方から聞いた「がまだしもん(者)」(=熊本弁で"働き者")という言葉も、何となく思い出しました。

言葉の由来までは、聞きそびれてしまったのか、よく憶えていないのですが・・・
その時に、"がま・だし"という言葉の響きから、"我慢を出す"というようなイメージがあるなぁと感じてそうお伝えした所、同意して頂き「確かに"辛いこと大変なことに対して、我慢しつつも前向きに乗り越えてゆこう"という姿勢は、熊本人気質の中にあるかもしれません」というようなことをおっしゃっていたように思います。

未だ止まぬ余震に、自然の力の容赦無さを思い知らされ、不安を抱えて不自由な日々を過ごされていらっしゃる皆様を想えば、心痛むばかりではございますが・・・
熊本の方々の不屈の底力と"がまだし"の精神で、一日も早く安心な日常を取り戻され、復興が叶うことを信じています。

「スペック通りの陽射し」 アクリル淡彩 2016年 24.5×33.6㎝

絵画というものは、お疲れの心や希望を見失いそうな心への、一服の清涼剤にしかなりませんが(そこに歯がゆさも感じつつも)・・・
応援の気持ちを胸に、日々の制作に向かっております。

笹倉鉄平

2016年05月09日

旅先で出会う、犬と猫

桜の開花シーズンを迎え、いよいよ春も本番という時節になってまいりました。
気付けば、このページの更新が大分ご無沙汰となっておりました。

実はこの冬、ご多分に漏れずインフルエンザにかかりました。30年程ぶりだったせいか少々寝込んでしまった為、その分目標としていたスケジュールが後ろにズレてしまい、何かと余裕が無くなっておりました。日頃から予防には相当気を付けていたつもりでしたが、体力が落ちてでもいたのか・・・かかる時にはかかってしまうものですね。一つの厄払いとでも考えておきましょう。
勿論、今はすっかり完治し、元気に絵を描いております。

さて先日、「散歩の時間に」という、(犬と)散歩する人が大勢繰り出す時間帯の、ドイツの街角を描いた新作が発表になりました。
以前から、サイン会の折やメールでも『どんな犬を飼っているのですか?』とか『絵の中の犬や猫の姿を探して、見つけて、楽しんでいます』とか『犬・猫、どちらがお好きですか?』等々、犬や猫に関する話題が出ることがよくございます。

世の中では、犬派?猫派?などと、血液型や星座の次くらいに人柄分析に使われる機会も多いようですが・・・絵に描く時には、そういった意識や観点は、無論ございません。
むしろ、"人の暮らし"を描いておりますと、犬や猫の姿はそこここに自然と登場することになるからです。それ程に、身近に人に寄り添う存在なのだと、風景画を描く時にはより実感致しますし、自分自身、どちらの姿にも癒しを感じ、自然と愛着を以って観る対象にもなります。

ヨーロッパを旅していて、犬や猫に全く出会わない町は、ほぼ無いと言っても過言ではございません。
街角ですれ違い、振り返って見たり、思わず視線で追ってしまったり、ついつい後をついて行ってしまったりする対象が、"美女"ではなく、愛らしい犬や猫の姿だったりする自分が、時おり心配にもなります(笑)。

犬の話題は、何度かこちらのページにも書いてまいりましたが・・・最近は猫のお話をされる方が、以前より多い印象があります。
猫と犬にはそれぞれ全く違う魅力があり、絵に描く際も意識してはおりますが・・・猫は、どうしても犬より姿が小さいことや(それぞれ例外もございますが一般的には)、町の中でもひっそりと風景にとけ込んで存在感を消している場合が多い為、風景の中に描く対象としては、条件的にどうしても犬より難しい気が致します。
それでも、独自の魅力には抗えず、猫を主役にした小品も(そうすれば大きく描けますので)、少しずつ増えてまいりました。

旅先では、当然"猫アンテナ"も張ってはいるのですが、活動的で目につきやすい犬に比べますと、どうしてもその出会いは少な目です。出会っても、人に慣れていない子ですと、逃げ足も速いこと速いこと・・・。
ですから、絵に比較的多いのが、寝ている姿や、遠くから眺めた"孤高"のムードを漂わせている姿、温かい場所でボ~っとする姿、ただ静かに歩いている姿、だったりします。目線すらもなかなか合せてくれません。
ですが、その辺りがまた、猫の魅力の一つですので全く文句は無いのですが・・・。

例えば・・・
「湖水を眺めながら」という色鉛筆だけで描いた作品。猫が描かれている印象、ございますでしょうか?
実は、テラスの左側の方に・・・居るのです。こんな風に存在感を巧みに消しながら、目立たず、風景に楚々と一体化しつつも、何とも言えない温かみを絵にもたらす――そんな不思議な魅力が、猫にはあるのです。

「湖水を眺めながら」  ジクレー 2011年 41.0×31.8㎝

また、町を歩いていて、本当に何の気なしに振り返った視線の先に、猫。で、「あ!居た」と目を丸くすることがよくよく、よく有ります。
その"場所"は、特に窓辺であることが多く、最近描いた下の作品もそんな状況で出会ったシーンの一つです。ふと見つける猫のこんな姿に、ほっこり気分がどれほど盛上がることか・・・

「まぶしいような、ねむいよな」  アクリル 2016年 19.0×33.3㎝

ヨーロッパでは、石造りの建物が多く、構造上その壁は分厚く、窓の桟の部分というのでしょうか、窓辺の外側にも内側にも猫が居られる余地が在るからなのでしょう―――窓周辺は、"猫多発スペース"として認識しています。日当たり良好な窓辺は温かく、猫たちにとっては、当然居心地が抜群に良い場所ということなのでしょう。

旅先、それぞれの土地、様々な風景の中で、人々の生活に馴染んで暮らす彼らと出会う度に感じる、癒しと心が温まる感覚をお伝えしたくて・・・・どういう風に描くのが良いのか、"絵創り"や構想には案外と時間を要し、苦労もするのですが、それは楽しい作業でもあるのです。

笹倉鉄平

2016年03月22日

質問にお答えします Part.8

新しい年のスタートは、久しぶりに京都で迎えました。

思い返せば昨年は、海外の方達に日本の良さを知ってもらいたい、という気持ちが絵に自然と出たような気がしております。
心が痛む事件が世界中で次々起こり、殺伐とした気持ちになりがちな昨今。
逆に自分の心は、安らぎや、明るさ、楽しさ等を、願い欲しておりますので、これから描く作品には、そういった想いがより色濃く出てくるのかもしれませんね・・・

さて、頂戴している質問がまた溜まって参りましたので、今回はその中から、いくつかお答え致します。
まずは「ちいさな絵画館」のアンケート内にて頂戴しました、中学生の女の子からのこんなお尋ねです。

Q.1 描いていて、途中で絵具がなくなったら同じ色はどうやったら作れるんですか?

A."同じ色を作る"ことは、絵具チューブから出したそのままの色以外は、混ぜる絵具の数が多いほど難しいです・・・というより、近い色・似た色は作れたとしても、全く同じ色を再度作ることは、通常不可能です。多く使いそうな色は勘で予めタップリ作ったりもしますが、時間が経つと乾いて使えなくなってしまいます。長い時間でなければ、料理用のラップで覆っておくと、乾かずに使えますので・・・時々やっております。
ただ私の場合、広い面積を一色で塗ることはほぼ無く、違う色を重ねながら描いてゆきますので、使い切ってしまった同じ色をもう一度作る、という問題は起こらないのです。

Q.2 「アンティーク雑貨の店」の中に出てくるお店は、実在するお店なのでしょうか?実在するとしたら、イタリア、フィレンツェのどのああたりにあるお店でしょうか?

「アンティーク雑貨の店」 2015年 キャンバス・ジクレー

A.描かれているのは、実在しない店です(私の作品ではよくあることなのですが)。しかし、モデルにした店がフィレンツェに3軒ほどございます。
街の中心部から、少し東の方向へ行った辺り(職人の店が多いエリア)で、気に入った店の、気に入った部分を参考に、"こんな店が在ったらいいな"と、自分の理想の店を想像しながら描いてゆきました。
ちなみに、お店の名前はイタリア語で『古き良き時代』と名付けて描いています。

次は『Teppei.Net』へのファン・メールにて頂戴しておりました2件です。

Q.3 (作品)「水の奥の世界」は、水面に映る樹々などは、逆さにして描かれたのでしょうか?

「水の奥の世界」 2015年 キャンバス・ジクレー

A.いえいえ、逆さまにはせず、普通に描いております。
水面に映る風景を、キャンバスの上下を逆にして、実像そのままに描いてしまいますと、人間の目線(視点)の高さ分のズレがありますので、映っている感じにならず違和感ある絵になってしまうのです。水面に映った景色や姿は、映りこんだモノそのものとして、そのズレを調整しながら描いてゆきますので、途中々々で逆さにして不自然さが無いかどうか確認は致しますが、逆さまにして描くことはありません。

Q.4 先生は気分転換が旅行でしょうか?先生が興味を持つことは何なのかな、と・・・

A.旅は、自分にとっては、むしろ興味の対象なのだと思います。自分の未踏の地、知らない街や村、その文化・伝統等、調べて気に入った場所に関して、興味は尽きません。
では気分転換かというと・・・(結果的にはそうなっていると思いますが)絵を描くためにする旅は、いわゆる休暇として旅をすることと随分感覚が違います。余程自分に「これは気分転換のために行く旅だぞ」と言い聞かせていないと、そうはならないと思います(笑)。

また、興味を持つ対象は、旅のこと以外にも人並みに色々ありますが・・・やはり一番は美術に関することです。中学生時代に興味を持ってから、もう45年以上も経つのに、今も夢中のままです。
旅先でも美術館には足を運びますし、国内でも洋画・日本画を問わずオールド・マスターから若い画家、工芸・写真まで、時間的余裕がある時には観たい、触れたいと思っています。

逆に純粋な気分転換には、散歩や、音楽、映画鑑賞、等・・・心地よい時間を五感で楽しむコトを選んでいるようです。


以上、徒然なるままにお答え致しました。

笹倉鉄平

<スタッフ注> 掲載している質問につきましては、お問合せの内容部分のみを、そのまま抜粋させて頂いております。

2016年01月18日