アトリエや旅先から届いた、笹倉鉄平のメッセージを掲載しています。

アトリエから

2013年07月31日/朝日と夕日の違いって?

新しい版画集がつい先日発刊されましたが、もうご覧頂けましたでしょうか?

今回は版画集ということもあり、あえて文章や解説は掲載せずに、シンプルかつ純粋に絵の世界を楽しんで頂こうと思っておりました。
そこで、全ての絵・作品に共通する集大メッセージとして、冒頭の扉ページに『絵の中の"光"が届きますように――』という一行だけを入れさせて頂きました。

どんな時にも、どんな人にも、"光"というのは、温かな希望や安らぎを運ぶと信じて、ずっと描いてきました。
"光"の象徴するものが観て頂く皆さまの心へ、平安や前向きな気分を少しでもお届けできればいいなぁ…と願ってのメッセージです。

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さて、そんな"光"がらみの話題(?)ということで・・・今回は「ちいさな絵画館」のアンケート内にて、過日頂いておりました以下のご質問に答えてみたいと思います。

Q."朝"と"夕方"の描き分けに、特別な手法はあるのですか?(光の加減など)
タイトルを見ずに絵だけ見ると、どちらかわからないことがあります。
「光」の効果ってすごいですね。自然光であっても、人工光であっても、光に照らされることで、気持ちが明るくなる気がします。
…もしかしてそれは、闇・陰があってこその「光」なのでしょうか…
(2013年4月のアンケートより、該当部分を抜粋)

A.確かに朝日と夕日は両方とも"陽の光"、同じものですから、絵の中で明確に描き分けをするのはとても難しいことなのですが・・・

絵の中に在る建物や人の様子といった"状況"から、観る方に時間帯を感じ取って頂ければ・・・と考えながら描くことも、方法の一つです(ご質問頂いている、いわゆる"手法"ではないですが)。
例えば、早朝から開いている店舗はそうそうありませんし(=閉まっている店が描かれていれば早朝か真夜中)、人の生活の場面も朝と夕では、どこか違いがあります。

その辺りを上手に描き分ければ、観る人にも伝わるであろうと考え(願い)ながら、筆を運んでいます。
ただ、観る方の感じ取られた時間がたとえ私の設定と違っていても、それぞれの想像の中で、自由に感じ取って頂けましたら・・・それはそれで良いと思います。


ちなみに、太陽光は角度(陽の傾き)が斜めになる程、赤い光線が強く見える為、水平線・地平線に太陽が近づけば、夕焼けの色はますます濃くなるのだとか。

また、射す角度が同じであっても、朝日と夕日では何処となく違いを感じますよね。
それは、朝の時間帯よりも、夕方になるにつれて空気中に漂う水分や細かな塵が一般的には多くなる為、夕焼けは一段と黄~赤色を鮮やかに見せるからなのだそうです。

日本の夕焼けが燃えるような茜色に染まるのは、高湿度という気候の条件によるところも大きいのかもしれません。
"紅い朝焼けは雨の前兆"と昔から言われるのも、降雨を前に湿度が上がっている状態だから・・・ということなのでしょう。

蛇足ではございますが・・・
先日リリースされました「雨のち夕陽・・・」は、元々空気がきれいな場所な上に、雨に洗われて大気が澄み渡った状態だったので、夕方でありながら朝日のように爽やかな色彩の夕空でした。


自然光に対し、人工光である照明が様々にある中で、その種類により、白熱灯はオレンジっぽく、蛍光灯は青白く・・・等と、やはり変化がありますし、時間帯や天候による周囲の明るさ暗さの状態など、多様な条件の下で"光"の表情はどんどん変わってゆきます。

そうした"光"を絵に描き出す為に・・・
光を実際に発するような"発光絵具"など、無論存在しませんから、上記のように状況で描き分けることも一つ。
そして、この方のご推察通り、影の部分の"暗さ"を描くことによっても、色々な表情の"光"を表現しようとしています。

影を濃く暗く描けば、強い光を表現することが出来ますし、逆に影を薄くしてゆけば、淡い優しい光として感じさせてくれます。
影の長さやその落ちる方向で、光のある場所=光源も表せます。
また、くっきりした影、ぼんやりとした影・・・等々の描き方や、複数の光が大小・強弱組み合わさる様子を描くことで、その場の雰囲気や空気感、抒情などを演出することもあります。

とにかく、言葉で説明するのが困難な程に、"光"というのは多種多様です。
長い年月の間に沢山の「光」の絵を描いてきましたが、その描写方法は計り知れない程に奥深く、これからもまだまだ探究が必要でしょう。
自分の一生のテーマになると常に感じつつ、楽しみながらその魅力を追いかけています。


笹倉鉄平

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