アトリエや旅先から届いた、笹倉鉄平のメッセージを掲載しています。

アトリエから

2008年12月03日/小さな絵や大きな絵

先日カレンダーをめくると…もう最後の一枚。
何かやり残したことが有るような、無いような――思わず「はぁ」と、小さなため息も出ようというものです。

思えば、今年はずい分多くの"枚数"を描いたように感じます。
きっと、スケッチ作品と共に"小さな絵"を割と描いたせいでそんな印象になるのでしょう。
「笹倉鉄平・ちいさな絵画館」を、今年訪れて下さった方は、「あの小さなキャンバス絵の数々のことかな?」と、具体的に思い当たられるのではないでしょうか。

さて、我ながら感じた"小さなキャンバスに描く"久しぶり感に、何の気無しに振り返ってみました所、なんと'98年頃にギリシャの風景でたくさん描いて以来10年程ほとんど描いておらず、驚いてしまいました。
・・・随分描いていなかったものです。

再びミニ・キャンバスを見直したきっかけは、パリのバガテル庭園で出会った猫の絵でした(『流れ始めた音楽に』という作品)。
その猫を「ちょっと描いてみようかな」と思った時、"小さなキャンバス画面にサラッと描いた"イメージがハッキリと自分の頭の中に浮かび、その通りに描いてみると、(自分で言うのもナンですが)イイ感じの仕上がりだったのです。
以来ここ一年程、いつもの油彩やスケッチなどの制作の合間に、小さなキャンバスに描く機会が、結構多くなったのでした。

スイスやドイツなどで"心に引っかかったまま残っていた風景"や、パリでの個展用の作品などを、0号(既成の最小サイズ/14cmx18cm)~5号位までのサイズや、小さな円形のキャンバスに、次々と描いてゆきました。
描きながら再確認したことは、小さな絵には、大きな絵では表現できない世界があることでした。

見過ごしてしまいがちな、街角で偶然出会う「ちょっとした幸福感」を絵に描こうとすれば、大画面のキャンバスではなくて、小さな方が適しているでしょうし、観る人に対して的を絞ったピンポイントなイメージを描き出せるかもしれないと思うのです。
そして、それとは逆に、その場所に居るかの様な臨場感など、大きな絵でしか伝え難い世界観も、勿論たくさん有るわけです。

私は、ある光景を描こうと思った時、大きさはどの位でどんな形のキャンバスや用紙にしようかということを、これまで全くと言っていいほど迷ったことがありません。
ということは、絵のイメージや伝えたいことによって、そこは自然と決まってくるのでしょう。

更に、それは形・サイズだけのことではなく、画材の選択にもあてはまることで・・・油彩より水彩やスケッチの方が似合うな、という風景もありますし、絵の具を塗り重ねて細かく描く方が伝えやすいモチーフもあります。
ここ10年間程でも、意識してやったわけではないのですが、鉛筆や色鉛筆だけで描いてみたり、パステルでの表現に夢中になってみたり、アクリル絵の具で描くスケッチや淡彩画に魅力を感じたり、と…自分の中であたかも流行り(?)があったかのようでした(笑)。
考えてみれば、その時々や自分の年齢につれて、伝えたいことや描きたいイメージが、微妙にゆるやかな変化を辿ってきているのでしょうから、さもありなん…です。

また、"小さな絵"の制作には利点があることにも今回気づきました。
普段の制作中などに思いついた、「こんな表現をするとどうだろう?」とか「こんな題材をこんな構図で描いたらどうか?」等々、大画面ではやりづらいチャレンジや新しい表現方法などを、アイデアが湧いたら即トライ出来るという点です。
観る方の立場からですと、そんな風には見えないかと思いますが、自分としては小さいながらもワクワクするような新しいコトが小さい画面に必ず入っており、今後大きな作品の中でどう生かしてゆけるか思案したりもしているのです。

さて、そんな風に描いている"小さな絵"たちは、年末年始の東京大丸の展覧会にも恐らく何点か展示されると思います。

2回連続で、真面目な絵の話になってしまいましたが、描くことばかりに頭のほとんどを使って日々を過ごしているものですから…ご容赦下さい。
もっと気軽に読んで楽しんで頂けるような話題にしたい、と常々思ってはいるのですが…なかなか難しいものです。
来年からはもっと努力?します(笑)。

笹倉鉄平

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