アトリエや旅先から届いた、笹倉鉄平のメッセージを掲載しています。

アトリエから

2006年06月29日/勝負は時の運?

日本中が熱くなったサッカー・ワールドカップ、ドイツ大会。
四年間待ちに待っていた日本代表の戦いは、決勝トーナメントに進めぬまま・・・応援していた私たちにとっては、ため息と共に肩を落とす結果で終わってしまいました。

ただ、苦しかった試合の直後でありながら、代表選手たちの多くが口にしていた「気持ちを切り替えて"次"に向かう」という言葉が、不思議とキーワードの様に心の中に色濃く残りました。
それは、サッカーの試合だけではなく、なにやら人生においても、学ぶべき精神を含んだ言葉として感じてしまったからなのかもしれません・・・少し大袈裟ですが(笑)。

"勝負は時の運"と言いますが、今回のサッカーで考えてみても、対戦の組合せくじ引きに始まり、選手のコンディション、天候、審判のジャッジ、果てはボールの転がる方向まで、無論それらが全てでは無いにしても、偶然性や運・不運というのは結果を大きく変える要素としては重大なものであることに間違いありません。
"運も実力のうち"と言われては、本も子もない話ですが・・・(笑)。

さて、社会生活にも似た様な側面がありますよね。
いかに頑張って努力をしようとも、その力を発揮させる機会にたまたま恵まれなかったり、誤解をされたり、それこそ時の運・不運に大きく左右されたり、誰しも多かれ少なかれあるものですし、多くの方が経験されていらっしゃることでしょう。(だからと言って、努力や頑張りすらせずあきらめていては、無論何事も始まりはしないのですが。)

しかし、結果が良くも悪くも、それに伴った厳しい状況や辛い経験を乗り越えれることで、必ずやその人の心のキャパシティは広く深くなり、次に苦しい状態に追い込まれた時でも、取り乱すことなく冷静に対処出来るようになることでしょう。
事に当たる際に、慌てたり理性を欠いていたりすると、悪い方向へ行きがちですから・・・そう考えると、"苦境というのも、自分を成長させてくれるチャンス"くらいの、大らかな気分での受け入れ方が理想的なのかもしれません。

それに、どうやら運・不運の周期や大小には、人それぞれ違いがあるようで、例えば私の場合、一昨年・昨年とイタリアで個展、この秋は中国で展覧会を開催という画家として幸運な機会に恵まれて、ありがたくも多くの方々から「おめでとう」というお声を頂戴しております。
では、全ての事柄が幸運に包まれて運んでいるかというと決してそんなことは無く、うまくいかない悪運めいた事だって、並行してちゃんと(?)起こっているわけです。
そんな、両面が混じり合った状況が、ある意味現実であり、当たり前のことなのかもしれません。
それでも、大きな流れで見れば、今は間違いなく幸せな時なのだと思います。

思い返せば、解らない事や迷える事柄ばかりで、私自身悩み多き青春時代でしたが、世の中が"解らない"からこそ恐れを知らずに、突き進んで楽しめていた事も多かったのだど思います。
社会へ出てからのデザイナー時代は、残業が月200時間以上、月の休日が1日、短い睡眠時間、等が当たり前のことで、よく体がもったものだと自分でも呆れる程に忙殺されていました。
そんな中でも時間を作っては絵の勉強を続け、画家へ転向することが出来たことは、運の巡りが良かったからなのでしょう。
しかしその後、絵の制作や活動に関しては大変に充実していまたが、逆に思いもしなかった良くない出来事も次々と起こっていた所を見ると、長い運の低迷期に入っていたのでしょうか?・・・現在は、その低迷にめげずにやって来た分、良い運が巡ってきたように感じますし、何より今の自分があるのは、そういった試練があってこそではないかとすら思えたりもします。

若い頃は、他人の幸せそうな姿を見ると、その人たちは皆100%の幸せの中にいるのだろう、などとと思いがちでしたが、今は、良いこと・悪いことはどんな人にもあって、そのバランスが上手くとれていれば概ね幸せなのではないかと思えます。
極端に見れば、その人にとって重要な部分で、努力して得た結果に満足や充実感を感じられれば・・・たとえそれが少ない割合だとしても、十分に幸福感を得られるのではないかと思うのです。
ラッキーなこともアンラッキーなことも何も無く、日々の平穏な生活と平和な気分だけありさえすれば・・・それもまたとても幸せなことなのだと感じます。
最近そういった価値観の方が楽しく、それこそ地に足の着いた確かな幸せなのだと思えてなりません。
(そんな「日々の暮らしの中に在る、平凡でありながら大きな幸福感」への思いを、絵にも描いています。)

さてさて、ワールドカップを見ていてつらつらと考えていたことに端を発して、なんだか大変取り留めの無い話になってきてしまいました。
このHPを見にいらして下さる皆さん――特に若い方々へ、へこまずに生きる(?)為のメッセージとして読んで頂ければいいなぁなどと、僭越ながら思いつくまま書いてしまったのですが・・・え?そんな風に聞こえない上に、第一分かりづらい???・・・ですよね?(笑)

どんな人にも"良い時"と"悪い時"はありますし、特に、悪い結果や状況を事実として受け入れることは、とても苦しいことです。
先日たまたま観ていた映画の中で、こんな主旨の台詞のやり取りがありました。
『なぜ自分はこんな辛い目に遭わなければならないのか?』と、思い悩む若者に対して、慈愛に満ちた笑顔の老人はこう諭します――『人は苦しい状況に追い込まれると、そういう風に考えがちだが、そんな時こそ、今自分が出来る事、なすべき事だけを考えて行動しなさい。』

不思議と胸に迫るものがあり、とても励まされた気がしました。
・・・あれ?この一言だけ書いておけば充分だったかもしれませんね(笑)。

笹倉 鉄平

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